「事務をもう1人雇うか、外に頼むか」を考えるとき、比べる相手として最初に浮かぶのは月給だと思います。でも、会社が1人を雇って払うお金は、月給だけではありません。

この記事では、東京で事務スタッフを正社員で1人雇った場合に、年間で実際にいくら出ていくのかを、2026年度の保険料率と公開されている手数料を使って足し上げます。先に結論を置きます。

月給

2年目以降(年間)

1年目(人材紹介で採用した場合)

25万円

約368万円(月あたり約31万円)

約467万円

30万円

約437万円(月あたり約36万円)

約556万円

35万円

約507万円(月あたり約42万円)

約646万円

※東京・39歳以下・賞与なし・通勤手当月1万円で計算。内訳と前提はこの後で説明します。

つまり、月給の約1.2倍が、毎年出ていくお金の最低ラインです。採用した年は、ここに採用費が乗ります。さらに、この表には入れていない「見えない費用」もあります。順に見ていきます。

① 給与——東京の事務職なら「月25万〜35万円」で試算する

事務職の給与は、会社と経験で大きく変わります。そこでこの記事では、月給25万円、30万円、35万円の3つで計算します。

この幅にした根拠は2つあります。

  • 厚生労働省が公表している職種別の平均賃金(時給換算・賞与込み・全国)では、「総合事務員」が経験1年で1,663円、5年で1,952円です。月160時間勤務として月額に直すと、約27万〜31万円になります
  • 同じく厚生労働省の賃金統計(2025年)では、一般労働者の月あたりの賃金は、全国で34.1万円、東京都で41.8万円です。東京は全国より2割ほど高い水準です

全国の事務職が27万〜31万円前後で、東京はそれより高い。この2つから、25万〜35万円を、東京で事務の正社員を採用するときの現実的な幅として置きました。

賞与は、計算を分かりやすくするため入れていません。賞与を出す会社は、その額に加えて、次に説明する社会保険料(約16%)もその分だけ増えます。たとえば月給30万円で年2か月分の賞与を出すと、年間の費用はさらに約70万円増えます。

② 会社が負担する社会保険料——給与の15.7%

給与から天引きされる社会保険料とは別に、会社も同じくらいの額を納めています。東京の会社(協会けんぽに加入)の場合、2026年度の会社負担は次のとおりです。

保険

会社の負担率

備考

健康保険

4.925%

東京の料率9.85%を労使で折半

厚生年金

9.15%

料率18.3%を労使で折半

子ども・子育て拠出金

0.36%

会社だけが負担

子ども・子育て支援金

0.115%

2026年4月分から新設。料率0.23%を折半

雇用保険

0.85%

一般の事業。2026年度の率

労災保険

0.3%

事務系の業種(その他の各種事業)。全額を会社が負担

合計

15.7%

40〜64歳は介護保険0.81%が加わり16.51%

月給30万円と通勤手当1万円なら、会社負担は年間で約58万円です。給与のほぼ2か月分が、給与とは別に毎年出ていきます。

通勤手当も、社会保険料を計算するときの報酬に含まれます。実際の保険料は、給与を区切りのよい金額に当てはめた「標準報酬月額」で計算するため、ここでの試算とは数千円ずれます。健康保険組合に加入している会社は、組合ごとに料率が違います。

③ 採用にかかる費用——0円から、年収の30%まで

採用費は、どの経路で人を探すかで桁が変わります。

  • ハローワークや知人の紹介: 費用はかかりません。ただし、応募が来るまでの期間は読めません
  • 求人広告: 媒体と掲載期間で費用が変わり、採用できなくても掲載料はかかります
  • 人材紹介: 採用が決まったときに、年収に対する割合で手数料を払います

人材紹介の手数料は、紹介会社が厚生労働省の「人材サービス総合サイト」に届け出て公開しています。この記事のために4社分の手数料表を確認したところ、4社とも採用した人の1年間の賃金の30%(消費税別。うち1社は「30%以内」)でした。月給30万円なら、手数料は108万円、消費税込みで約119万円です。

人材紹介は「採用が決まったときだけ払う」仕組みなので、無駄打ちにはなりません。そのかわり、1回の金額はこの記事の中でいちばん大きな項目です。入社後すぐに辞めた場合に手数料がどれだけ戻るかは、紹介会社との契約で決まるので、契約前に確かめてください。

どの経路でも、書類を読み、面接をし、条件を詰めるのは社内の人の時間です。事務の採用でこれを担うのは、たいてい経営者か、いま事務を抱えている人その人です。

④ 戦力になるまでの期間——請求書には出ない費用

ここからは、お金として出ていくわけではないものの、確実にかかっている費用です。

入社した日から、前の担当者と同じ速さで仕事が回ることはまずありません。社内のファイルの場所、取引先ごとの決まりごと、月末の段取り。覚えるまでの間も、給与と社会保険料は満額かかっています。

仮に最初の3か月は半分の戦力だとすると、月給30万円の場合、成果に結びつかない給与と保険料は約54万円です(月給25万円なら約45万円、35万円なら約63万円)。

さらに、教える側の時間もかかります。教えるのは多くの場合、いま業務を抱えている人です。その人の手が止まる分は、この計算に入っていません。

※「3か月で半分」は説明のための仮定です。実際の期間は、業務の複雑さと、手順がどれだけ書き残されているかで大きく変わります。

⑤ 席・PC・ソフト——年約7万円と、席を増やすなら家賃

1人増えれば、その人が使う道具も増えます。

  • PC: 1台20万円を4年使うとして、年約5万円(仮定)
  • 業務用のアカウント: Google WorkspaceのBusiness Standardなら、1人月額1,600円(年契約・税別、2026年9月時点)。年約2万円です。会計ソフトなど、人数で料金が決まるツールがあればその分も加わります
  • 席: 空いている席があれば0円です。席がなければ、広い部屋へ移るか、レイアウトを変えることになります。参考までに、都心の主要7区の大規模ビルの平均募集賃料は、共益費込みで1坪あたり月32,828円です(2026年7月末)

席の費用は会社によって0円から大きな額まで幅があるため、この記事の合計には入れていません。合計に入れているのは、PCとアカウントの年約7万円だけです。

⑥ 辞めたときと、休むとき——同じ費用がもう一度かかる

厚生労働省の雇用動向調査(2025年)では、労働者全体の離職率は13.7%でした。パートを含む全体の数字ですが、1年でおよそ7人に1人が職場を離れていることになります。

事務スタッフが辞めると、③の採用費と④の立ち上がりの費用が、もう一度かかります。次の人が決まるまでの間は、誰かがその業務を肩代わりするか、業務が止まります。引き継ぎの資料がなければ、立ち上がりには最初の採用のときより時間がかかります。

辞めなくても、業務が止まる日はあります。正社員には、入社から6か月たつと年10日以上の年次有給休暇があります(労働基準法の最低基準)。体調不良や家庭の事情で休む日もあります。事務が1人体制なら、その人がいない日は、その人の業務も止まります。

これらは起きるかどうかも、いつ起きるかも読めないため、年間の合計には入れていません。ただ、「1人雇えば、その業務は安心」とは言い切れないことは、金額と一緒に見ておいてください。

年間の総額——月給30万円なら、毎年約437万円

①〜⑤のうち、お金として確実に出ていくものを足すと、次のようになります。

項目(年間)

月給25万円

月給30万円

月給35万円

給与

300万円

360万円

420万円

通勤手当(月1万円と仮定)

12万円

12万円

12万円

会社負担の社会保険料(15.7%)

49万円

58万円

68万円

PC・アカウント

7万円

7万円

7万円

2年目以降の合計

368万円

437万円

507万円

月あたりにすると

約31万円

約36万円

約42万円

1年目に加わる人材紹介の手数料(税込)

99万円

119万円

139万円

1年目の合計(人材紹介の場合)

467万円

556万円

646万円

※東京・協会けんぽ・39歳以下・賞与なしで計算。40〜64歳なら介護保険の分、年約3万円増えます。保険料率は2026年度のものです。

この表には、④の立ち上がりの費用(月給30万円で約54万円)、教える人の時間、席の費用、辞めたときの費用は入っていません。ハローワークや知人の紹介で採用できれば1年目は安くなりますが、2年目以降の合計は、実際にはこの表より大きくなるのが普通です。

外に頼む場合と並べると

当社のスプレッドシートBPOは、月額198,000円(税込)からです。年間では2,376,000円で、採用費や立ち上がりの費用はかかりません。料金は1店舗(1支店)あたりなので、複数の店舗や支店の業務をお任せいただく場合は、その数に応じた金額になります。

金額だけを並べれば、1人雇う場合の2年目以降(年368万〜507万円)より小さくなります。ただし、雇うことと外に頼むことは、同じものを買っているわけではありません。その違いは外注と派遣、比べる軸が違うに書いたので、ここでは、どちらが向いているかだけを書きます。

雇うほうが向いている場合

  • 電話や来客の対応、紙の書類の取り扱いなど、会社にいる必要がある仕事が中心(当社ではお受けしていません)
  • 事務だけでなく、ゆくゆくは他の仕事も任せる人として育てたい
  • 依頼が月に10時間程度で安定している(この場合は、雇うより時間制のオンラインアシスタントが合います)

外に頼むほうが向いている場合

  • 担当者が辞めたり休んだりしても、業務を止めたくない
  • 採用や教育に、経営者や現場の時間を使いたくない
  • 作業を代わりにやってもらうだけでなく、その作業自体を仕組みで減らしていきたい

月額に何が含まれ、何を頼めないのかは、月額198,000円で、何をどこまで頼めるのかにまとめています。

まとめ

  • 東京で事務スタッフを正社員で1人雇うと、月給25万〜35万円なら、2年目以降でも年368万〜507万円かかる
  • 給与のほかに、会社負担の社会保険料が給与の15.7%(2026年度・39歳以下)かかる
  • 人材紹介で採用すると、採用した年に年収の30%(税別)の手数料が乗る
  • 戦力になるまでの期間、教える人の時間、辞めたときの引き継ぎは、請求書には出ないが確実にかかっている
  • 雇うか外に頼むかは、金額だけでなく、会社にいる必要がある仕事かどうかで決める

事務を1人増やすかどうかを検討しているなら、その人に任せようとしている業務をそのまま教えてください。30分の無料相談で、外に頼める部分と、社内に残したほうがよい部分を分けてお伝えします。

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参考にした情報

  • 賃金構造基本統計調査による職種別平均賃金(時給換算) 令和8年度適用(厚生労働省)
  • 令和7年賃金構造基本統計調査の概況(厚生労働省)
  • 令和8年度の都道府県単位保険料率(全国健康保険協会)
  • 健康保険・厚生年金保険の保険料額表 令和8年度(全国健康保険協会)
  • 令和8(2026)年度 雇用保険料率のご案内(厚生労働省)
  • 労災保険率表(厚生労働省)
  • 人材サービス総合サイト 職業紹介事業者の手数料表(厚生労働省・4社分)
  • 令和7年雇用動向調査の結果(厚生労働省)
  • 東京オフィスマーケット動向 2026年7月末(三菱地所リアルエステートサービス)
  • Google Workspace 料金プラン(Google)

金額と料率は、2026年10月時点で確認した公開情報に基づきます。