「Microsoft 365とGoogle Workspace、どちらにすべきか」——会社のIT環境で最も多い相談の一つです。この記事では両者を料金・アプリ・共同編集・自動化の4軸で正面から比較し、最後に当社としての結論を書きます。
先に比較の全体像です(2026年8月時点、両社公式サイトに基づく)。
軸 | Microsoft 365 | Google Workspace |
|---|---|---|
設計思想 | デスクトップアプリが主役、クラウドは同期先 | ブラウザが主役、すべてクラウド前提 |
表計算 | Excel(機能の絶対量で最大) | スプレッドシート(共同編集・連携が前提の設計) |
共同編集 | 対応(M365サブスク+OneDrive/SharePoint保存が条件) | 標準動作(条件なし・ブラウザのみで成立) |
自動化 | VBA(ローカル実行)+Power Automate | GAS(クラウド実行・時間トリガー標準) |
料金帯 | 2026年7月1日に現地通貨価格を更新(次回は2027年1月予定) | 下表の公式価格を参照 |

そして先に結論の要約も置きます: どちらが優れているかという問いには、答えがありません。業務の前提で決まります。 その上で、当社リバレンスは「共同編集と自動化を前提にした業務設計」を支援する立場から、スプレッドシート中心の設計を提案することが多い——その理由と、Excelを選ぶべき条件も含めて、以下で全部書きます。
最初に、当社の立場を開示します
比較記事を読むときに一番大事なのは「書き手がどちら側の人間か」です。
当社リバレンスは、Google Workspaceを自社利用し、Excel・スプレッドシート業務のBPO(スプレッドシート中心)を事業にしている会社です。つまりGoogle側に利害があります。だからこそこの記事は、感想ではなく両社の公式情報と公開価格だけで比較し、Excelを選ぶべき条件も同じ解像度で書きます。中立を装うより、立場を明かした上で事実を並べる方が、読む側は判断しやすいはずです。
比較1: 料金(2026年8月時点・税抜/ユーザー/月・年契約)
Microsoftは2026年7月1日付で現地通貨建て価格の更新を実施しており(次回の更新は2027年1月の予定と公式に告知されています)、以下はその更新後・2026年8月21日時点の公式価格です。
プラン | 月額(税抜) | 主な内容 |
|---|---|---|
Microsoft 365 Business Basic | 1,049円 | Web/モバイル版Office、メール、Teams、1TB |
Microsoft 365 Business Standard | 2,098円 | 上記+デスクトップ版Office |
Microsoft 365 Business Premium | 3,298円 | 上記+高度なセキュリティ・デバイス管理 |
Google Workspace Business Starter | 800円 | Gmail、ドライブ30GB、Meet |
Google Workspace Business Standard | 1,600円 | 上記+2TB、録画等 |
Google Workspace Business Plus | 2,500円 | 上記+5TB、高度な管理・セキュリティ |
Microsoft 365は年間サブスクリプション(年払い)・Teams込みの単体プラン価格、Google Workspaceは年間プランの通常価格です。いずれも税抜表示で、別途消費税がかかります。2026年8月21日採取。

料金だけ見ると両者は近い価格帯で並んでいます。**差がつくのは金額ではなく「その金額で何が前提になるか」**です。Microsoft 365のBasicとStandardの差は「デスクトップ版Officeの有無」で、ここに両者の設計思想の違いが一番よく表れています——Microsoftはデスクトップアプリに追加料金の価値を置き、Googleには最初からデスクトップ版という概念がありません。
比較2: アプリ——「Excelの機能量」対「ブラウザ完結」
表計算単体の機能の絶対量では、Excelが上です。 これは当社の立場からも率直に認めるべき事実で、ピボットの細かい制御、複雑なグラフ、統計・分析系の機能、大規模データの処理耐性、印刷レイアウトの作り込み——長年デスクトップで進化してきた蓄積は簡単には埋まりません。「Excelでできることがスプレッドシートでできない」場面は実務で確実にあります。
一方、Googleスプレッドシートの強みは機能の量ではなく前提の違いにあります。インストール不要でブラウザだけで動く、URLを渡せば共有が終わる、変更履歴が標準で全部残る、GoogleフォームやGmailと素で繋がる。「1人で高度な分析をする道具」としてはExcel、「複数人で日常業務を回す場所」としてはスプレッドシート——それぞれの出自がそのまま得意分野になっています。
比較3: 共同編集——「条件付きで可能」対「標準動作」
ここは誤解が多い論点なので正確に書きます。Excelも共同編集に対応しています。 ただし条件があります: Microsoft 365のサブスクリプション版Excelを使い、ファイルをOneDriveまたはSharePoint Onlineに保存していること(公式が明記する要件です)。社内ファイルサーバーのExcelや買い切り版では共同編集は動きません。またマクロ(VBA)入りファイルの共同編集には、Microsoft公式が認める注意点があります——詳しくはマクロと共同編集の記事にまとめました。
Googleスプレッドシートは、この「条件」が存在しません。ブラウザで開けば、それがそのまま共同編集です。機能の差ではなく、条件の有無の差——中小企業の現場で「Excelの共同編集がうまくいかない」相談の多くは、機能ではなくこの条件(保存場所・ライセンス)を満たせていないことが原因です。
比較4: 自動化——VBA対GAS
業務効率化の観点で、実は一番差が出るのがここです。
VBAはExcelの中で動く自動化で、資産の蓄積が膨大にあり、ローカルで完結する処理には強力です。ただし実行にはそのファイルを開く「人とPC」が必要で、夜間や定時の自動実行、Web上のデータ取得、メール送信との連携は苦手分野です(Power Automateで補えますが、別製品・別学習コストになります)。
**GAS(Google Apps Script)**はGoogleのサーバー上で動くため、PCを閉じていても時間トリガーで自動実行できます。「毎朝7時に集計してメールで送る」「フォーム回答が来たらシートに整形して通知する」——中小企業が本当に欲しい自動化はだいたいこの形で、GASはこれが標準機能の範囲です。
当社が業務の仕組み化でスプレッドシート+GASを使うことが多いのは、この「人がいなくても動く」性質が、属人化をなくすという目的と直結しているからです。
で、どちらを選ぶべきか——条件で決まります
こういう会社は | 選択 |
|---|---|
高度な表計算・分析・帳票が業務の中核。使う人が決まっている | Microsoft 365(Excel資産をそのまま) |
取引先とのやり取りがExcel形式で固定されている | Microsoft 365 または併用 |
複数人での同時作業・リアルタイム共有が日常 | Google Workspace |
定時実行・通知・フォーム連携など「人がいなくても回る」自動化をしたい | Google Workspace(GAS) |
既にExcel資産が大量にあるが、上の2つもやりたい | 併用(下記) |
現実の中小企業の多くは最後の行です。そして併用は妥協ではなく、移行の正しい途中経過です。全ファイルを一斉に引っ越す計画は必ず破綻します。共同編集と自動化が必要な業務から順にスプレッドシートへ移し、1人で完結する高度な作業はExcelに残す——業務単位で選ぶのが、当社が実務で勧めている進め方です。
当社の結論
立場を開示した上で、当社の結論を書きます。
リバレンスは、中小企業の日常業務の置き場所としてはスプレッドシート中心の設計を提案することが多いです。 理由は機能の優劣ではありません。当社が解決したい問題が「あの人しかわからない」「その人がいないと止まる」という属人化で、その解決には変更履歴が残ること・誰でも同じ環境で開けること・人がいなくても自動で回ることの3つが効き、これらがスプレッドシート+GASでは標準の前提として揃っているからです。
同時に、Excelを手放す必要はないとも考えています。高度な分析や既存のVBA資産はExcelの領分で、無理に移すと業務が壊れます。だから当社の実際の支援は「どちらかに統一」ではなく、業務を棚卸しして、共同編集・自動化が必要なものから順にスプレッドシートへ、残すべきものはExcelにという順番の設計です。ツールの選択より、この順番のほうがずっと重要だというのが、多くの現場を見てきた実感です。
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